知床半島羅臼町管内の鳥類リスト 

知床持物館研究報告・第11集・1990より




田沢道広
086-18
目梨郡羅臼町湯の沢町388
知床国立公園羅臼ビジターセンター

1.はじめに
 羅臼町に移り住んで5年になる。この間に行った様々な鳥の調査、知人からの聞取り、過去の調査報告書から
の引用、普段の生活の中で見掛けた鳥などをまとめて、羅臼町管内のみの鳥類リストを作製した。
 不備な点も多々あると思うが、これを元に今後充実させてゆきたいと考えているため、ご指摘等いただければ
幸いである。

2.調査範囲と調査地域の概要(図−1)
 リストに入れた記録の範囲は羅臼町管内としたが、知床半島先端部については、斜里町の一部をも含めてまと
めた。それは台地状の草原を町界で分けることが難しく、海岸部も一地域として調査されていることが多いから
である。具体的には先端部台地伏草原の全てとメガネ岩から知床岬までの海岸線が含まれている。
 羅臼町は、知床半島を山脈の稜線で斜里町と分けた南東側に位置し、半島の基部では標津町と接している。海
岸線は根室海峡に面しており、海峡を挟んで北方領土である国後島がある。
 地形は急峻で平地や草原、湿地が少なく、道路及び人家は、海岸及び羅臼川沿いに集中している。ただし、相
泊から知床半島先端部にかけては道路は無く、春から秋だけに利用する漁師の番屋が点在するだけである。
 遠昔別岳山頂付近が原生自然環境保全地域、知西別岳から岬寄りは知床国立公園、公園とほぼ同地域が鳥獣保
護区に、それぞれ指定されている。
 夏は太平洋からの濃霧で覆われることが多く、気温は余り高くならない。冬は海の影響で極端に気温が下がる
ことがないため、夏冬における寒暖の差は少ない。降水量は近隣市町村と比べて多い。冬から春先にかけては、
雪を伴った強風になることが多い。
 基幹産業は漁業で、全体の85%を占める。

3.記録の収集について
 私個人が携わった鳥類調査の記録と、普段の生活の中で確認した種、他者が確認したもので私自身が聞き取っ
た記録中から信頼性があると判断されたもの、保護及び死体回収された種、以上の記録に、過去の調査報告書で
羅臼で確認されたことが明確であるものを加えた。

4.鳥類リスト作製結果と補足
 羅臼町の鳥類リスト作製結果を表−1に示した。リストでは、44科189種が記録された。このうち、知床
半島全体の確認種数240種(中川、1988)に含まれていない種は、さぎ科ミソゴイ、がんかも科コブハク
チョウ、からす科カササギの3種類である。
 前述の240種にこの3種を加えた243種を知床全体の確認種類数とすると、今回のリストで記録された1
89種は、知床全体の77.8%となる。
オオハクチョウは、毎年4月中句から5月上句までの間に、羅臼の海岸線に沿って標津町方向(南南西)から知
床岬先端方向(北北東)へと上空通過する多くの群れが見られる。1986年5月23日から28日の田沢他に
よる岬での観察(梶、1986)
他では、岬到達後の群れは、それまでのコースのほぼ延長線上、北北西の海上へ向かって飛び去ることが確めら
れている。
 また、オオハクチョウの秋の観察例については、今のところ私は見聞きしていない。
なお、1984年6月上句に羅臼町本町の海岸で成鳥1羽、幼鳥1羽が浦坂周一氏(羅臼町教育委員会学芸員)
他によって確認されている。
 オジロワシ、オオワシは、12月〜3月に数が増えるが、2月初旬から3月中句には極端に増加する。198
3年2月20日には、羅臼町だけで2種合計2682羽が確認されている(オジロワシ・オオワシ合同調査グ
ループ、1985)。
 なお、オジロワシは知床で繁殖するため、夏期も少数生息している。
 タンチョウは、羅臼町内においては、生息に適した広い湿原はないが、主に秋に標津町側、峰浜地区にある比
較的小面積の牧場で数回観察されている。
 シマフクロウは、羅臼では他地域より比較的多く、主に秋から冬にかけて各河川の河口及びその近くで見るら
れることが多い。
 カワセミについては、羅臼川で数回と、1988年5月3日に知床岬先端部の海岸で、海にダイビングして採
餌しているのが一度観察されている。
 ハクセキレイは、冬期極端に少なくなるが、海岸部で少数が越冬しているものと考えられる。
 ジョウビタキは通常は見られないが、1987年12月から88年3月にかけて、雄のおそらく1個体が羅臼
で越冬した。
 アトリとハギマシコは冬鳥であるが、羅臼では厳寒期にはほとんど見られなくなる。
 なお、亜種としての記録ではあるが、ツグミの亜種であるハチジョウツグミが、1974年4月16、20日
に湯の沢で確認されている(広野、1978)。

5.羅臼における希少烏種の記録について
 羅臼町における希少種については、リスト中に確認年月日と確認者を略して記載してあるが、そのデータを以
下に示しておく。
(1)カンムリカイツブリ
 1980年5月22日に、知床岬先端部のメガネ岩南の小さな入江で夏羽の1個体が確認されている(中川、
1981)。
(2)コシジロウミツバメ
 年月日不明、秋に羅臼町の海岸で保護された1個体が、涌坂氏のもとに届けられている。(3)ヒシクイ
1987年9月11日午前8時35分、湯の沢上空を北北東へ、26羽の群れが飛び去るのを田沢が確認。また、
1989年10月17日、羅臼町栄町の羅臼川にいた1個体を、同町在住の宮腰実氏と田沢が確認している。
(4)チシマウガラス
 1986年4月27日に知床岬羅臼側の岩礁で、十数羽の群れを田沢、島田他が確認している(梶、198
6)。
(5)ミソゴイ
 1989年4月18日、緑町で同町在住の福原氏が1個体を保護、4月19日に田沢が羅臼ビジターセン夕一
に収容するが、4月30日に死亡。
(6)コプハクチョウ
 1977年5月17日、海岸町の海岸で1個体確認。その後この個体は釧路市立動物園に収容された。この年、
八雲町、室蘭市、ウトナイ湖など各地でコブハクチョウが確認されているが、これらは、大沼公園から逃げ出し
た7羽のコブハクチョウと推測されていた(大畑、1987)。しかし、5月10日以降ウトナイ湖のコブハク
チョウの数は7羽から減っていないため、この羅臼で確認された個体については、大沼及びウトナイ湖のものと
は別個体であったと思われる。従って、野生個体であった可能性も残されているため、あえて今回のリストに加
えた。
(7)ハイイロチュウヒ
 1980年10月9日に知床岬先端部で米田政明氏によって確認されている(中川別1981)。
(8)チュウシャクシギ
 1984年9月18日に知西別岳と遠音別岳間の稜線上で確認されている(中川、1988)。
(9)エトロフウミスズメ
 1987年12月18日に、羅臼沖の船中に飛び込んできたものが、涌坂氏のもとに届けられ保護、収容。翌
19日、田沢が標識後に共栄町チトライ川河口で放鳥。
(10)ホトトギス
 1985年6月15日に松法町で大沢達郎氏が声のみ確認している(鷲田、1986)。
(11)アオバズク
 1987年6月7日に緑町で人家の窓ガラスに衝突して保護される。羅臼ビジターセンターに収容して、翌8
日に田沢が標識、放鳥した。
(12)ヤツガシラ
 1975年8月7‐13日に湯の沢で確認されている(広野、1978)。
(13)ツメナガセキレイ
 1980年5月21日、知床岬の岩礁で冬羽の5羽が確認されている(中川、1981)。
(14)クロジョウビタキ
 1986年4月25日知床岬先端部、文吉湾上の林で田沢、島田、矢部他が確認している(梶、1986)。
(15)ヤマガラ
 1985年4月22日に、相泊で大沢達郎氏が確認している(鷲田、1986)。
(16)シラガホオジロ
 1976年4月20日に、湯の沢で確認されている(広野、1978)。
(17)ミヤマホオジロ
 1985年4月3日に、湯の沢で確認されている(鷲田、1986)。
(18)カササギ
 1989年2月8日に海岸町で多数のカラスにつつかれていた個体を、町民が羅臼町役場に持ち込む。その後
田沢が羅臼ビジターセンターに保護、収容したが、2月10日に死亡する。しかし、この個体の尾羽が若干擦り
切れていたため、飼鳥であった可能性もある。

引用文献
藤巻裕蔵,1985:知床半島烏類調査記録−1965年の調査から、知床博研報7:13−16
広野孝男,1978:羅臼町の鳥−羅臼温泉周辺の4年問の記録、北海道野鳥だより31:2−5
梶光一,1986:知床岬エゾシカ調査−調査の概要ワイルドライフレポート4:38−41
三浦二郎,1988:雅路庵通信41:1−8
中川元,1981:知床半島の鳥類調査報告、知床半島自然生態系総合調査報告書(動物篇):43一79
中川元,1982:知床半島先端部の鳥類、知床博研報4:49一54
中川元,1985:知床半島中央部の鳥類、知床博研報7:17−20
中川元・藤巻裕蔵,1985:遠音別岳原生自然環境保全地域における鳥類、遠音別岳原生自然環境保全地域調
査報告書:379−404
中川元,1988:知床の動物群衆−鳥類、知床の動物:59−121
大畑孝二,1987:ウトナイ湖におけるコブハクチョウの生息状況について、Strix6:80一85
オジロワシ・オオワシ合同調査グループ,1985:オジロワシ・オオワシー斉調査報告書第2報28P.根北郷土研究会
鷲田善幸,1986:羅臼町の野鳥、研修と実践の歩み−羅臼高等学校研究紀要15:107−112

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