haida 三日月とオリオン
2002/09/03

 それにしても不思議な夜でした。

 これまでのぐずついた天気がウソのように回復し、この日は風もなく穏やかな晴天で、初め夜空には月もなく、天の川を中心に満天の星が広がっていました。
 そして、それは、北斗七星が北西の空に沈み始める頃(22:00頃)に始まったように思います。



<北斗七星(22:00)>
 ハイダは、居間で私の隣に伏せて、私の左手に両前足をかけたまま放そうとしません。ハイダが姿勢を変えても(呼吸の苦しいハイダはこの頃頻繁に姿勢を変えます)私の手だけは離さなようにしています。
 相変わらず息は苦しそうで、ハイダのお腹は激しく波うっていました。

 しばらくして、ここ数時間、もうろうとして焦点の定まらない目に急に力が戻り、私の目をしっかりと見つめ、意を決したかのようにぐっと顔に近づけてキスをしてきました。私は別れのキスだととっさに悟りましたが、信じる勇気が無く、あえて否定しながらも、しっかりと受け止めてやりました。

 その後、ハイダは、やはりはっきりと目的を持った足取りで、ちょうど風呂に向かうかみさんの後を追い、そのまま風呂場に入り、いつもの大好きなお湯を少しだけ舐め、湯船に浸かったかみさんと向かい合い、今思えば別れを告げていたように思います。
 ここで再びもうろうとしてきたのか?その後、しばらく風呂の入口で伏せてかみさんの入浴を待っていたが、苦しいのか?外にでたがり、出してやるとすぐひんやりとする草の上で寝始めた。
 ちょうど北西の空に沈もうとしている大きな北斗七星がハイダの頭上にさしかかっていました。



<カシオペア・天の川・流れ星(23:00)>

 北斗七星に変わってカシオペアが高く昇った頃になっても、ハイダは緑の草の上に寝て動こうとしません。

 見守るしかない私たちの頭上には、天の川を中心とした星がこぼれ落ちそうなくらい輝き、いくつもの流れ星が長く尾を引きながら流れていきます。祈らずにはいられない美しい瞬間でした。



<三日月(00:00-00:30)>
 まだ寝てる(動けない)ハイダを抱きかかえ(手足の力が抜けていて抱くのも一苦労)家に入る。

 何かを察したのか?たくさんのシカが家のすぐ近くにいて、まわりを囲んでいる。遊び相手(からかい相手)の最後を見届けようとしているのか?

 ハイダの寝る居間に布団を並べて川の字になって消灯。昇り始めた低い三日月の光がハイダにあたり、その白い毛はよりいっそう白く輝く。今思えばこの時もう天使になりかけていたのかもしれない。



<三日月とオリオン(02:00-03:30)>
 東に見える国後島からは三日月が昇り、少し遅れてオリオン座が昇り始めていました。やがてオリオンが追いつき三日月と隣り合った頃、その三日月の白い光に包まれながら、オリオンに抱かれてハイダは昇っていきました。
 冬の星座オリオンと共に行くなんて、やっぱりハイダは冬が好き。冬の犬でした。

 徐々に高く昇りハイダの魂を送り届けようとしていた三日月とオリオンは、やがて白み始めた空と同化し、白い魂は空に消えて行きました。




<太陽(04:00-)>
 この日は久しぶりに青空が広がり、午後には、知床の山から流れる白い綿雲が青空に浮かんでいました。
 緑の草原を駆け回っていたハイダは、今日は青い草原を駆け回っています。


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